前から少し気になっていたこちらのツールを使ってみました。
- WindowsとUbuntuで動作するJAXAの無料ソフト
- 複数のプロバイダからの衛星データのダウンロードを一括で行える
- ダウンロードしたデータは、指定範囲のPNG形式での可視化等の定型処理を一括で行える
JAXAでは、多種多様な衛星データ配信サイトを運営しています。代表的な配信サイトとしては、G-portal (GCOM-C(しきさい)、GCOM-W(しずく)データ等)、AW3D(標高データ)、GSMaP(降水データ)等があります。しかしながら、それらの衛星データは配信サイトやセンサ種別によってデータフォーマットや仕様が異なり、複数のデータを組み合わせて利用する場合には手間がかかります。
そこで、それらの手間を低減し、JAXA衛星データ利用を推進するため、JAXA/EORCでは衛星横断型のデータ前処理ツール(Automated Satellite Image Stacking Tool:ASIST(アシスト))を開発してきました。図1に示すように、ASISTを使用することで、配信サイトや衛星データの仕様の差異を意識することなく、一括してデータを取得・前処理・出力することが可能になります。
出所:https://www.eorc.jaxa.jp/news/2021/nw210721.html
目次
ASISTのダウンロード
本家サイトからダウンロードします。
私はWindowsユーザーなのでWindows版をクリックして、Zipをダウンロードしました。
ダウンロードしたのは以下の2ファイルです。
- ASIST_windows.zip
- ASIST_settingfiles.zip
環境構築
Zipを解凍すると READMEがついていましたので、まずはそれを確認しました。
MATLAB Runtimeのインストール
MATLAB Runtimeが必要だそうですが、私の環境には入っていなかったのでいれます。
こちらのサイトからダウンロードします。
R2021a (9.10)を入れます。3.6GBくらいでした。
READMEにはR2019a(9.6)と書いてありますが、間違いみたいです。
ダウンロードしたzipを解凍するとsetup.exeがあるので、それを実行します。
7zipのインストール
ユーザーマニュアルによると、解凍ソフトを入れておくと高速化できるそうです。
私は7zipが所定の位置に格納されていましたが、この場所に実行ファイルがある必要があります。
C:\Program Files\7-Zip\7z.exe
各種設定
アクセス設定
アクセスの設定をします。登録がまだの場合は例えば以下から登録できます。
今回私は上の2つを入力することにしました。
入力はG-Portalアカウントの設定を解凍したzip内にあるSetAccount.txtにアカウントを入力(XXXXとなっている部分)します。
%%% Data provider Account information (Service(Don't change),ID,Pass,Key(if any))
Account, G-portal, XXXX, XXXX, XXXX
Account, MODIS , XXXX, XXXX, XXXX
Account, GSMaP , XXXX, XXXX, XXXX
Account, JASMES , XXXX, XXXX, XXXX
パラメータの修正
SetParameter.txtの中身を確認しておきます。
%%% Range Setting %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
DateRange, 2021/08/20, 2021/08/20, % Date Range (YYYY/MM/DD) Start, End
LatRange , 34.8, 35.8, % Latitude Min, Max (- 90 ~ + 90 deg)
LonRange , 139.25, 140.25, % Longtitude Min, Max (-180 ~ +180 deg)
私は日付と場所を東京湾のあたりに変更しました。
ちなみにデフォルトだと以下がオンになっていて、GeotiffとPNGが出力されるようになっています。
%%% Output Setting %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
…
Output, GTIF, ON ,% ON,OFF : Geotiff output (deflate compressed)
…
Output, PNG1, ON ,% ON,OFF : PNG(+KML) output (individual values)
Output, PNG3, ON ,% ON,OFF : PNG(+KML) output (upper 3 values comp RGB)
…
他も細々設定があるのですが、とりあえず自分の環境次第のようなのでそのままでいきます。
衛星データ保存フォルダ設定の修正
SetParameter.txtの下の方に以下がありますので、自分が保存したいディレクトリを指定しておきます。
%%% Downloaded & Input Datasets Archive Folder Setting %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
DataFolder, C:\ASIST\input\
解析実行プロダクトの指定
解凍したzipにSetProduct.csvがあるのでその中身を確認して、処理を実行したいプロダクトを選択します。
私はSSTをよく見ているのでSSTをとりあえず選択しました。選択する際には一番左を1に変更して保存すればOKです。
Execute,Resolution,Sensor,ID,Version,Area,Resolution_deg,Resolution_m,Duration,Category1,Category2,Unit,Description
…
1,Middle,GCOM-C.SGLI,SSTD_01D,2,Global,1/480 deg,250 m,Daily,Ocean,Surface Temperature,degC,SST Daytime
…
そのほか色々設定がありますが、詳しくは ユーザーマニュアルを参照してください。
ディレクトリ配置
ディレクトリの配置はCドライブ直下で以下にしました。
C:.
├─input #ダウンロードされたデータ本体が保存される
├─param #設定ファイル格納先かつ処理結果の保存先
│ Batch.bat
│ SetAccount.txt
│ SetParameter.txt
│ SetProduct.csv
│ SetType.csv
└─tools #プログラミング本体の格納先
default_icon.ico
IMG_Stack.exe
readme.txt
splash.png
実行
IMG_Stack.exeが配置されているフォルダに移動して以下を実行します。
C:\ASIST\tools>IMG_Stack.exe C:\ASIST\param
すると処理が始まります。こんな感じ。
%% ASIST (Automated Satellite Image Stacking Tool)
- Version : 2021-07-13_12:51:20_JST
- Until ; 2022-03-31_12:00:00_JST
- Developer : Earth Observation Research Center, JAXA
- Contact : Z-ASIST@ml.jaxa.jp
%% Tools Available Period check by Time
- Validated!
%% Set Files reading
- SetParameter.txt loaded correctly
- SetProduct.csv loaded correctly
Middle , GCOM-C.SGLI , SSTD_01D , 2
- SetType.csv loaded correctly
- SetAccount.txt loaded correctly
G-portal ... ID : Inputed , PASS : Inputed , KEY : No Input
MODIS ... ID : Inputed , PASS : Inputed , KEY : Inputed
GSMaP ... ID : No Input , PASS : No Input , KEY : No Input
JASMES ... ID : No Input , PASS : No Input , KEY : No Input
- No Vector (kml for Statistics) File detected
- No Raster (tif for Mask) File detected
%% KML files will not be used to detect ROI
%% Computer Memory Status
- Maximum Memory : 015.89 [GB]
- Using Memory : 001.08 [GB]
%% Date and Location is set
- Date : 2021/08/20 - 2021/08/20
- Lat : +034.80 to +035.80
- Lon : +139.25 to +140.25
%% GCOM-C.SGLI Middle resolution stacking started
%% GCOM-C.SGLI SSTD product downloading/detecting started
%% FTP Connection Processing
- Success!
%% Product Name Detection from FTP server
- Date : 001/001 : 0700 Files : 0001 Product found!
%% Downloading GCOM C product...
- Day:001/001, Product:001/001 - Downloaded !
%% Processing Product type, QA flag list
- SST
Size : 7820 , 5000
%% GCOM-C.SGLI SSTD processing started
%% Parallel Computing started
'local' プロファイルを使用して並列プール (parpool) を起動中...
並列プールに接続済み (ワーカー数: 2)。
%% Lat/Lon Grid detection
- Size : 001/001 ... done
%% Mask Image generation
- Skipped!
%% Data Loading ( Date : 001/001, A/D : 001/001 )
------10------20------30------40------50------60------70------80------90-----100
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
%% Image Projection ( Date : 001/001, A/D : 001/001 )
- Type : 001/001
- Div : 001/001 ... done
- Etim : 000.025 sec
- Memr : 009/100 ... OK
- Proj : 001/001 ... done
- Etim : 001.204 sec
%% Showing Processed Images by Type
- Type : 001/001
%% Image data saving
- Geotiff saving ... done
- EQR PNG1 (Type:SST) saving ... done
%% Meta data saving ... done
%% Parallel Computing Ended
%% Time : 20210824 20:53:07
%% Duration : 00:01:09
%% All process was finished !
結果の確認
C:\ASIST\param\GCOM-C.SGLI\L2.OCEAN.SSTD.01D.v2 に実行結果が出力されます。
せっかくなので、私が作った仕組みで生成した同じデータと比較してみます。
2021/08/20の東京湾のGCOM-C海面水温(SST)観測結果です。 #衛星データ #漁業 #釣り #リモセン pic.twitter.com/rmjB8sxz4A
— 【衛星観測】海面水温&CHLA【GCOM-C】 (@msv_gcomc) August 22, 2021
左が今回自動処理されたデータ、右が私のシステムで自動生成した結果です。
色味が若干違いますが、一致しています。(よかった!)
感想
今回は比較をしたいのもあってGCOM-Cでやってみましたが、かなり多くのプロダクトに対応しているみたいなので、とても便利そうです。
あとダウンロードが高速な感じがします。もしかしたらMATLABの方がアクセス速度出るとか、そういうのがあるのかもしれません。